【生肉转载】Febri TALK系列——大沼心

取材・文/岡本大介


①アニメ業界へ飛び込む転機となった

『天地無用! 魎皇鬼』

『ぱにぽにだっしゅ!』や『化物語』など多くの新房昭之監督作品に参加し、そのイズムを受け継ぎ、現在は監督として数多くの作品を手がけている演出家・大沼心が選ぶアニメ3選。1本目は、将来を決めかねていた青春時代に出会い、アニメ業界へと足を踏み入れるきっかけとなった『天地無用!魎皇鬼』。


主人公にヒーロー性を求めてしまう

――子供の頃からアニメが好きだったのでしょうか?

大沼 いえ、どちらかというとアニメよりもゲームのほうが好きでしたね。小学生のときにファミコンが登場した世代なので、まわりの友達も含めてそちらに夢中になっていました。小学校に上がる前だと『機動戦士ガンダム』の再放送を見ていた記憶がありますけど、自分はストーリーをまったく理解できず、ガンプラだけがひとり歩きして流行っていた感じです。あと同じ時期に見た作品で強烈におぼえているのは『ガンバの冒険』です。これも再放送なんですけど、ノロイというイタチのキャラクターが恐ろしすぎて、けっこうなトラウマになりました(笑)。


――アニメに興味が湧いたのはいつからですか?

大沼 かなり遅くて、高校を卒業したくらいです。ゲームが好きだったこともあり、将来はエンタメ業界に進みたいという漠然とした想いがあって、その一環でアニメを見まくっていた時期があったんです。


――そこで出会ったのが『天地無用!魎皇鬼』だったんですね。

大沼 そうです。この時期に90年代のOVAをいろいろと見ていたんですけど、個人的にいちばん刺さりました。とにかくキャラクターが魅力的でしたし、ドタバタなコメディの雰囲気もよくて。こういう肌触りのアニメを見たのは初めてで、当時の僕にとって斬新だったんです。


――ドタバタなコメディは大きな魅力ですよね。

大沼 ただ、僕はドタバタコメディってそんなに得意じゃないんですよ。でも、この作品はドタバタしつつも、最終的にはヒーロー物語として結実していくじゃないですか。今考えてみると、僕がとくに惹かれたのは主人公像だったのかもしれません。柾木天地(まさきてんち)って、序盤はわりといじられキャラで頼りなかったりもしますけど、終盤に覚醒してからは最高にカッコよく描かれるんですよ。「光鷹翼(こうおうよく)」のシーンとか、胸熱ですごく印象に残っています。


――たしかに天地はヒーローとして覚醒していきますね。

大沼 ですよね。僕は主人公にヒーロー性を求めてしまうタイプなんです。それも、何かしらの芯を持っていることが重要で、それがないとどうしても好きになれない。それは自分が作品を手がける上でも大切にしているところで、昔から変わっていないです。


――とくに印象的なシーンはありますか?

大沼 それが……キャラ以外はあまりおぼえていなくて(笑)。天地をはじめ、キャラがみんな魅力的だったことだけは強烈におぼえているんですよね。魎呼(りょうこ)を演じられている折笠愛さんの声が素敵だったなあとか、あとは原作者の梶島正樹さんが出した同人誌を買いに行ったなあとか、そういう思い出ばっかりですね。


――大人になってから見直したりはしていないんですね。

大沼 していないです。僕は基本的に同じ作品を二度見ることはほとんどありませんから。今回、取材を受けるにあたって久しぶりに見ようかとも思ったんですけど、やめておきました。もちろん、今見ても面白いと感じるとは思うんですけど、僕自身の経験値が段違いに増えているので、大きく印象が変わったら怖いじゃないですか。思い出は美しいまま残しておきたいなと(笑)。


いつかは主人公が最高にカッコいい作品を作りたい

――他に印象に残っている要素はありますか?

大沼 終盤に大きなバトルがあるじゃないですか。具体的にどのシーンというわけではないですが、あのあたりの作画や演出はインパクトがありましたね。いわゆるヌルヌルと動くタイプの絵ではないんですけど、この頃のAICさんの作画はノリノリで、素人ながら見ていてすごく惹かれました。当時は単純に「アニメーターってすごいなあ」と思っていたんですけど、業界に入っていろいろなことを知っていくと、あれは演出の力も大きかったんだなと気づきました。いいシーンを生み出すための段取りや設定の重要性については、この作品で気づかされることが多かったと思います。


――当時の大沼さんは、漠然とエンタメ業界を目指していた時期だったんですよね。

大沼 そうです。そんなときにこの作品と出会い、アニメ業界を目指そうと決めました。それなら、まずは絵が描けるようにならなければと考えて、専門学校に入ったんです。


――それまではあまり絵を描いてこなかったんですか?

大沼 そうなんです。僕の母親は元マンガ家のイラストレーターなので環境は整っていたんですけど、兄がすごく絵がうまくて、それと比較されるのが嫌だったんです。なので、頑なに避けてきたんですけど、『天地無用!魎皇鬼』を見たときに初めて「自分で絵を描いて、それを動かしてみたい」と感じたんですよね。それまではとくにアニメーターになりたいとは考えていなかったんですけど、不思議ですよね。


――アニメ業界に入るきっかけだけでなく、絵を描くことに目覚めた作品でもあるんですね。

大沼 さらに言えば、いつかは自分も主人公が最高にカッコいい作品を作ってみたいという思いも芽生えました。……思った以上にめちゃめちゃ影響を受けていますね(笑)。そんなわけですから、僕の中では昔から今に至るまで、どんなときも金字塔として輝き続けています。


②アニメ業界で生きていこうと思えた 思い切った演出を詰め込んだ

『ef - a tale of memories.』

『ぱにぽにだっしゅ!』や『化物語』など多くの新房昭之監督作品に参加し、そのイズムを受け継ぎ、現在は監督として数多くの作品を手がけている演出家・大沼心が選ぶアニメ3選。2本目は、TVアニメ初監督作品にして、現在へと続く基礎を確立した『ef – a tale of memories.』。


思い切って仕掛けや演出を詰め込むことができた

――『ef – a tale of memories.』は大沼さんにとっての初監督作品ですね。

大沼 そうですね。厳密に言えば、その前に1本だけOVAの監督をやらせていただいたことがあるのですが、TVシリーズはこれが初めてで、実質的には初監督作と言ってもいいと思います。これは自分のクリエーターとしてのマイルストーンというか、どうしても外せない作品なので、今回挙げさせてもらいました。


――原作は美少女ゲームですが、そもそもお好きなジャンルですか?

大沼 大好きです!(笑) 「葉鍵(はかぎ)」と呼ばれていたブランド(※Leaf、Key)のタイトルはほとんどプレイしていたくらいなので、監督をまかされたときにはすごくうれしかったですね。アニメーター一筋でやっていくつもりはなく、いつかは演出や監督をしたいと思っていたので「やってやろう」と気合いが入りました。


――伏線や謎が多くちりばめられているストーリーだけに、構成は大変だったのではないですか?

大沼 そこは最初から最後までずっと頭を悩ませていました。ただ、原作サイドから「話の骨格さえ守ってくれれば、あとは好きにやってください」と言っていただけたので、思い切って仕掛けや演出を詰め込むことができました。今振り返ると「若いな」と感じるところも多いんですけど。


――おっしゃる通り、随所で尖った演出が光っていて、この時代のシャフトさんらしいイズムを感じます。

大沼 そうですね。かなりピーキーな映像が多いのですが、当時はこういった試みを前向きに受け止めてくださる方が多かったと思います。デジタル技術の発展もあって、全体としては写実的でリアルな絵作りへと移行していた時代でしたけど、一方でそれを窮屈に感じる人たちもまだたくさんいて、僕もそのひとりだったんです。それこそ子供の頃に衝撃を受けた『ガンバの冒険』は、パースを無視するのも当たり前だし、画面がとてもデザイン的じゃないですか。絵がうまくなりたいと思ってアニメーターになった僕ですけど、リアルタッチな絵ばかりを描いていると「これって本当に面白いのかな?」と思うこともあったんです。幸いにも僕の師匠に当たる新房(昭之)さんも出﨑(統)作品がすごく好きで、そういう自由度の高さを認めてくださる方なので、そこはうれしかったですし、僕もこの作品で突き抜けたいなと思ったんですね。


第2話の新房さんとのやりとりはとても勉強になった

――本作にはその新房さんが監修として参加しています。実際の作業はどのように進めたのですか?

大沼 シナリオを見てもらったり、コンテを見てもらったり、新房さんにはいろいろなところで手伝っていただきましたが、基本的には僕の自由にやらせてもらいました。個人的に大きかったのは、新房さんに第2話の絵コンテを見てもらえたことですね。どんなにたくさんの言葉よりも、ひとつの制作物を見せてもらったほうがより多くのものが伝わってくるんです。とくにラスト付近の海辺をバックにした長尺シーンは、膨大なカットがフラッシュバックしてオープニング曲がかかる構成になっているんですけど、じつはコンテではその演出はなかったんです。ただ、ここは(新藤)千尋の記憶障害が明かされる場面ということもあって、新房さんから「それに紐付けた演出をしたらどうか」と提案されて、編集段階で変更しました。これは強烈に印象に残っていて、自分のその後の演出にも大きな影響がありますね。


――それで言うと第7話のBパートで、宮村みやこの留守電メッセージが画面を埋め尽くしていく演出も印象的でした。

大沼 第2話で新房さんのコンテや演出のアイデアを間近で見せてもらえたので、それをベースに発展させたのが第7話ですね。僕自身も美少女ゲームが大好きですし、当時のユーザー感覚からすると、きっとこういった演出も受け入れてもらえるだろうと思ったんです。さらに当時は自分で撮影することもできたので、コンテが上がった段階でいったん自分で撮影してみて、画面として成立するかを検証した記憶があります。ここに声と音が入ればいけるだろうという確信が持てたので、そのまま突き進みました。


――その他で、とくに印象深いシーンはありますか?

大沼 第11話ですね。コンテと演出を宮崎修治君にやってもらったのですが、とくに学校の屋上シーンはかなり綺麗に決まったなという思いがあります。校舎をぐるっと回り込む映像については、じつは原作のオープニングアニメの素材を使わせてもらっているんですよ。


――新海誠さんが作ったアニメーションですね。

大沼 そうです。僕らとしては原作オマージュというわけではなかったんですけど、結果的にはそう受け取った人も多くて、そこは複雑な気持ちでしたね。でも、いいフィルムになったのはたしかなので、結果オーライなのかなと思います。


――いろいろな思い出が詰まった作品になったんですね。

大沼 そうですね。もともとゲーム好きだったので、この作品に携わることができたことがまずうれしかったですし、いろいろな方の力を借りてではありますけど、監督として作品をトータルでコントロールすることの喜びも味わいました。ゲーム業界を選ばなかった未練や迷いのようなものが吹っ飛びましたし、これから先もずっとアニメ業界で生きていこうと、心の底から思えるようになった作品です。


「すべては演出」で押し通す庵野秀明さんはさすが

――TVシリーズはリアルタイムで見ていたのですか?

大沼 そうです。アニメーターになることを目指して専門学校に通っていた時期にちょうど放送されていました。すでに多くの方によって語り尽くされている作品ではありますけど、僕ら世代であれば、どうしても触れざるを得ないのかなと思います。


――やはり衝撃的でしたか?

大沼 もちろんです。まずTVシリーズであれだけの作画をやるのかっていうところから始まって、キャラもストーリーもすごいなあと思いながら見ていたらあの結末でしたから(笑)。碇シンジの精神世界など、あれだけ好き放題にやりながらも「すべては演出です」で押し通す庵野秀明さんって、やっぱりさすがですよね。


――とくに印象深かったシーンはどこですか?

大沼 初めて見たときは、第八話でアスカが見せた弐号機での八艘飛びとか、シンプルに「すげえ!」って興奮しました。当時はアニメーターとして業界に入る直前だったので、自分もこんな作品に関われたら、こんな絵が描けたらとテンションが爆上がりしたのをおぼえています。


――ちなみにですが、アスカ派とレイ派で言えば、どちらでしたか?

大沼 完全にアスカ派です。でも、世間的にはレイのほうが人気がありましたよね。レイがなんでここまでウケるのか、当時はまったく理解できなかったんですけど、まあそういう時代だったんでしょうね。


――その後も旧劇場版や新劇場版などさまざまな作品が公開されました。これらもすべて追いかけましたか?

大沼 すべて見ているのですが、必ずしもリアルタイムではないです。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は劇場で見ましたけど、それ以降は基本的に円盤でチェックしました。すでに業界に入っていて仕事が忙しくなったこともありますが、見てしまったら絶対に影響を受けてしまうと思って(笑)。けっこう影響を受けやすいタイプなので、それはヤバイと思って意図的に避けていた部分もあります。


いちファンとして見届けられて幸せ

――では、新劇場版はかなり遅れて見たのですか?

大沼 そうですね。どのくらい遅れて見たのかはおぼえていないですが、印象的だったのは第2作目の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(以下、『破』)』ですね。シンジが僕の求めていた主人公そのもので、ヒーローとしてカッコよかったんですよ。おそらく『破』のシンジって、庵野(秀明)さんよりも鶴巻(和哉)さんの描くシンジが色濃く出ていたと思うのですが、僕としてはそれがずっと見たかったんですよ。次の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』については『シン・エヴァンゲリオン劇場版』とセットで見るべきだろうと思い、ずっと見ませんでした。結果的に2021年に2作まとめて見た感じです。


――シリーズ最終作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はいかがでしたか?

大沼 めちゃめちゃスッキリしました(笑)。TVシリーズ以来、20年以上のモヤモヤがすべて晴れましたね。思った以上にキッチリと終わらせてくれたことには感謝しかないですし、それでいてテーマはTVシリーズから一貫して変わっていないのがあらためてすごいなと思いました。


――とくに印象深いシーンは?

大沼 終盤で、ユイがシンジの身代わりとなり、ガイウスの槍で13号機を貫くシーンです。僕がこのシリーズでずっと知りたかったのは碇ゲンドウの真の目的や本当の感情だったんです。それだけに、ゲンドウとユイの結末を見届けることができたときは最高の気持ちでした。まあ、ゲンドウの長いひとり語りはちょっとお腹いっぱいになりましたけど(笑)。


――結果的に、自身の仕事に影響はありましたか?

大沼 影響っていうのはないですね。ここまで突き抜けていると影響されようもないというか(笑)。ただ、ひとりのクリエーターとしては『エヴァ』シリーズのように多くの人に愛されるオリジナル作品を作りたいという気持ちが強くなりましたね。


――大沼さんは、これまでにそういう話が舞い込んできたことはありますか?

大沼 何度かあるんですけど、どれも空中分解しました。ゼロからイチを生み出して、さらに作品として完成させるのって本当に難しいんですよ。だからこそ、こうして20年以上かかってでもしっかりと完結させた『エヴァ』シリーズはすごいと思いますし、並大抵の情熱ではできなかったと思います。身も心も極限まで削りながら終わらせたんだろうというのは、見ていてもヒシヒシと伝わってきますね。


――大沼さんにとって、本作はどのような存在になりましたか?

大沼 ひとりのファンとして、最後まで見届けることができて本当に幸せでしたというのがいちばんです。自分がクリエーターとして目標にできるレベルの作品ではないので、そういう意味ではやっぱり憧れなんですかね。好きなアニメ監督をひとりだけ挙げろと言われたら庵野秀明さんの名前が最初に浮かびますから、やっぱりそういう存在なんだと思います。







日文原文链接:

大沼心①アニメ業界へ飛び込む転機となった 『天地無用! 魎皇鬼』

大沼心②アニメ業界で生きていこうと思えた 思い切った演出を詰め込んだ 『ef – a tale of memories.』

大沼心③影響を受けるのが怖かった 『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ

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