【生肉转载】Febri TALK系列——神前晓

取材・文/岡本大介


①本格SFとの出会い

『トップをねらえ!』

『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズや『〈物語〉シリーズ』など、数多くのヒット作品で音楽を担当する作曲家・神前暁が選ぶアニメ3選。1本目は、本格的なSF設定が生み出すドラマに衝撃を受けたと語る『トップをねらえ!』についてのインタビュー。


ウラシマ効果を利用した 切ないドラマに大興奮

――アニメは幼少期の頃から好きだったのですか?

神前 好きでした。ただ、アニメだけを好んで見ていたわけではなく、テレビで流れていたものを自然と楽しんでいた感じです。『ニルスのふしぎな旅』や『スプーンおばさん』など、NHKで放送していた番組がとくに印象に残っていますね。小学生になると、それに加えて『ドラゴンボール』や『シティハンター』といったジャンプ作品をよく見ていたと思います。


――今回挙げた『トップをねらえ!』はOVA作品ですが、こちらはいつ見たのでしょうか?

神前 中学生です。当時はOVAを買うお金なんてなかったんですけど、関西ローカルで『アニメだいすき!』というOVAやアニメ映画を放送するテレビ番組があって偶然見たんです。僕はそれまでちゃんとしたSF作品は見てこなかったので、衝撃を受けた記憶があります。


――『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』『超時空要塞マクロス』などは微妙に世代ではないんですね。

神前 そうなんです。僕の世代はそれらの作品が盛り上がったあとで、SFやロボットアニメの変遷でいうと谷間に当たるんです。それもあって『トップをねらえ!』は初めて見た本格的なSFアニメでした。


――庵野秀明さんの初監督作品として有名ですが、当時クリエイターの名前は意識していましたか?

神前 いえ、クリエイターの名前を意識するようになったのは、高校生になってから見た『ふしぎの海のナディア』なので『トップをねらえ!』は純粋にすごいアニメを見たという衝撃だけが残っています。


――どのようなところがすごいと思いましたか?

神前 やっぱりSF描写です。最初こそロボットが腕立て伏せをしていたりとか、美樹本晴彦さんの美少女キャラがちょっとセクシーだったりとコメディ色も強かったのですが、次第にシリアスさを増していって、スケールも壮大になっていくじゃないですか。とくに衝撃を受けたのは、ウラシマ効果による時間のズレが引き起こすドラマで、あれはたまらなく好きですね。


――宇宙で行動するノリコたちにとっては数分しか経っていないのに、地球では数カ月も経っているというものですね。

神前 そうです。第5話でノリコが地球に帰ってきた際、クラスメイトで親友だったキミコがすでに結婚して母親になっているじゃないですか。宇宙という存在のスケール感と、それに比して人の一生の儚さのようなものを感じて、あのふたりの対話がすごく好きです。あとはラストシーンも忘れがたいです。1万2000年もの時間が経って地球へ帰還したノリコとカズミを、人類が「オカエリナサイ」のメッセージで出迎えるあの演出は、ウラシマ効果という時間のドラマを利用した最高のクライマックスだと思います。


――神前さんは工学部出身ですが、作中で用いられていた数々の超理論についてはどう見ていましたか?

神前 リアルであることとリアリティがあることはまた違うと思うのですが、『トップをねらえ!』は完全に後者で、そのレベルが非常に高いと思います。作中の科学用語を説明するミニコーナー(科学講座)も用意されていて、不思議とそれが説得力があるんですよね。子供心に半分くらいは信じていたと思います。真実と虚構のあいまいさっていうのは創作物の大きな魅力だと思うのですが、庵野監督はそこのセンスがずば抜けていますよね。それはのちの『新世紀エヴァンゲリオン』に至るまで、庵野作品の大きな魅力のひとつだと思います。


――ちなみに『新世紀エヴァンゲリオン』についてはどんな印象をお持ちですか?

神前 リアルタイムで見ていてもちろん好きなんですけど、僕にとっての庵野作品はやっぱり『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』なんですよね。原体験ということもあって、インパクトの大きさが違う感じです。

――2004年には続編の『トップをねらえ2!』が制作されましたが、こちらは見ましたか?

神前 はい。中盤まで『1』とのつながりが隠されていただけに、直接的につながっていることが判明してからクライマックスまでの展開はカタルシスがあって、『1』のファンとしてはすごく楽しめました。


――音楽は田中公平さんが担当していますが、初めて見たときはどこまで意識していましたか?

神前 最初に見たのは中学生でしたが、当時はほとんど意識していなかったと思います。高校生になって田中公平先生の名前を知ってからは、すぐにサウンドトラックを買うなど、すごく注目していましたね。


――高校生のときから将来は作曲家になることを考えていたのですか?

神前 いえいえ。吹奏楽でトランペットを吹いたりはしていましたが、音楽家になろうとはまったく思っていなかったです。当時は純粋にアニメファンとして田中先生の劇伴を好きで聞いていました。


――田中さんの音楽は、ご自身の創作活動に影響を与えている部分はありますか?

神前 私はどちらかというと「キャッチーな音楽を作る作曲家」だと評していただくことが多いんですけど、そういう意味では田中先生はその最たるお手本ですね。田中先生の楽曲が持っているストレートな力強さにはいつも憧れています。以前、『セキレイ』というTVアニメのOP主題歌(「セキレイ」)で、『サクラ大戦3』の主題歌(「御旗のもとに」)のオマージュ的なものを仕込んだことがあったんです。そうしたら田中先生から連絡が来て、てっきり怒られるのかなと思ったら「君はよく研究しているね」と言われまして(笑)。


――怒られると思ったら、褒められたんですね。

神前 そうなんです。それ以来ずっと仲良くさせていただいている縁もあって、僕にとっては心の師匠のような存在です。田中先生がすごいのは『ONE PIECE』や『ジョジョの奇妙な冒険』など、1980年代から現在までずっとヒット作に関わっていらっしゃることですね。40年以上にわたって時代の先頭を走り続けているというのは本当にすごいことですし、尊敬しかありません。


②アニメ沼にハマった

『ふしぎの海のナディア』

『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズや『〈物語〉シリーズ』など、数多くのヒット作品で音楽を担当する作曲家・神前暁が選ぶアニメ3選。インタビュー連載の2本目は、庵野秀明監督やガイナックスなど、クリエイターやスタジオの名前を意識したきっかけの『ふしぎの海のナディア』。


「人間vs神」が織りなす 深い人間ドラマに感動

――『ふしぎの海のナディア』の放送当時は、神前さんは高校生ですね。

神前 たしか高校1年生だったと思います。NHKのこの枠のアニメはずっと見ていたので、その流れで視聴しました。最初は世界名作劇場のようなちょっと牧歌的な雰囲気で始まったので、そういう感じかと思っていたらすっかりダマされました(笑)。


――1本目で挙げた『トップをねらえ!』と同じく庵野秀明監督で、こちらも本格的なSF作品です。

神前 僕の場合はこの作品を見たことで初めてクリエイターの名前に興味を持つようになったんです。調べてみたら中学生のときに見て衝撃を受けた『トップをねらえ!』と同じ監督さんで、どちらもガイナックス制作ということもわかって。これはすごいクリエイターとスタジオがあるぞと思い、さかのぼって『王立宇宙軍 オネアミスの翼』も見ました。


――『ふしぎの海のナディア』に関してはどんなところが面白かったですか?

神前 ナディアやジャン君をはじめ、ネモ船長やエレクトラさん、敵のガーゴイルに至るまで、キャラクターたちの複雑な人間ドラマがとても好きでした。それと同時に世界の真相もしだいに明らかになっていくじゃないですか。人間ドラマとSF設定のシンクロが絶妙で、全体としてすごくワクワクしながら見ていました。


――グランディス一味など、本筋には絡まないキャラクターもみんな個性的でしたね。

神前 グランディス一味なんて最初は完全にタイムボカンシリーズの三悪だったのに、それがあそこまで活躍することになるんですから(笑)。たしかにどのキャラクターもみんな魅力的でしたね。


――とくに好きなキャラクターはいましたか?

神前 サンソンが好きでしたね。キザでダンディなんだけどムードメーカー的存在でもあって、最後にはマリーと結婚までしてしまう。『新世紀エヴァンゲリオン』でいうところの加持リョウジっぽいんですよね。それでいうとネモ船長は碇ゲンドウですし、彼に恋心を抱くエレクトラさんは赤木リツコなんですよね。このふたりのドロドロした大人の恋愛関係は、そのまま『エヴァ』に継承されていると思います。


――エレクトラのネモ船長に対する感情は、愛してもいるし憎んでもいる、まさに愛憎入り混じった感情ですよね。

神前 エレクトラさんがネモ船長の子供を身ごもっているのにはビックリしました。高校生だった当時の僕には、ふたりの関係は正確には理解できていなかったと思います。


――主人公のナディアに関しては、どんな印象をお持ちですか?

神前 ナディアはとても面倒くさい人なんですけど、振り回される感じが男の子にとっては楽しい気もしますし、僕自身も当時はすごく魅力を感じました。先ほどの『エヴァ』への置き換えでいえばアスカでしょうか? たしかに僕は『エヴァ』ではアスカ派だったので、当時はアクティブなヒロインが好きだったんでしょうね。今思うと「どこが良かったんだろう?」って感じですけど(笑)。

――世界観やメカニック的な視点ではいかがですか?

神前 『トップをねらえ!』が「人類vs物理学」の話だとすれば、『ナディア』は『エヴァ』と同じく「人類vs神」の話なんですよね。『ナディア』では自分たちを作った存在への畏れみたいなものも描かれていて、そこは高校生ながらすごいなと感動しました。メカニックに関しては、本作には『トップをねらえ!』に登場するヱクセリヲンやヱルトリウムといった宇宙船の名前がたくさん登場するので、まずはそういうところでオタク心がビンビン刺激されました。「裏設定としてふたつの世界はつながっているんじゃないか?」とか、オタク友達と盛り上がっていました。それに個人的にはロボットよりも宇宙船や戦艦のほうに萌えるタイプなので、そこも興奮しましたね。


――とくにお気に入りのシーンなどはありますか?

神前 第36話から最終話までの4話が好きですね。一気にギアチェンジした感じで、N-ノーチラス号の怒涛の反撃はなんとも言えないカタルシスを感じます。いろいろな要素がギュッと凝縮されている最高のクライマックスだと思います。


――劇伴は鷺巣詩郎(さぎすしろう)さんですが、音楽面の印象はいかがでしたか?

神前 僕からすると、鷺巣先生は人間とは思えないほどの天才ですね。田中公平先生が「陽」の頂点とするなら、鷺巣先生は「陰」の頂点といいますか。とくにネオ・アトランティス側の楽曲群は、ガーゴイルのテーマ曲(「ガーゴイル」)をはじめ、聞いていて本能的な恐れの感情を喚起させます。


――わかります。ゾクゾクする感じですね。

神前 でも、それでいてとても美しいんです。圧倒的に振り切った感性と天才的な発想力に加えて、難解かつ技巧的でもあって。あのようなダークで危険な雰囲気の楽曲は僕にはとても作れないなと思いつつも、だからこそ強烈に憧れる気持ちもあるんです。


――いちばん好きな楽曲は何になりますか?

神前 なかなか決められないですが、敵の原子振動砲でノーチラス号が絶体絶命に陥った時の曲(「バベルの光」)はすごく好きですね。この曲はのちに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』でも使われているんですけど、そういうところもオタク的には胸アツでポイントが高いです。


③自分自身の原点

『涼宮ハルヒの憂鬱』

『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズや『〈物語〉シリーズ』など、数多くのヒット作品で音楽を担当する作曲家・神前暁が選ぶアニメ3選。インタビュー連載の3本目は、神前自身が初めて手がけたTVアニメ作品であり、同時に出世作ともなった『涼宮ハルヒの憂鬱』について。


TVアニメのデビュー作が 『ハルヒ』で本当によかった

――『涼宮ハルヒの憂鬱(以下、ハルヒ)』は、神前さんが初めてTVアニメの音楽を担当した作品ですね。

神前 そうです。正確にいうとその前に『MUNTO 時の壁を越えて』というOVAを担当させていただいたのですが、そのときはまだナムコに勤めていたので変名で参加していたんです。なので「神前暁」として初めて担当させていただいたのが『涼宮ハルヒの憂鬱』です。


――『ハルヒ』は’00年代のアニメ史においてもとても重要な名作ですが、選んだ理由は?

神前 これはいち視聴者としてではなくて、それまで見る側だったのが作る側に回ったという意味で、僕にとっては欠かせない作品なので挙げさせてもらいました。


――制作当時はどんな心境だったのですか?

神前 右も左もわからない状態で、無我夢中でした。それまではゲーム会社でゲーム音楽を作っていましたが、ゲームと比べてアニメは求められるスピードと曲数が段違いで、とにかく必死に食らいついていく感じでした。


――中でも「ライブアライブ」(第1期第12話/ 第2期26話 )で描かれた「God knows…」のライブシーンは、作品を象徴する名シーンとして今でも語り継がれています。

神前 すごいことです。もともとあのシーンはハルヒたちがアニメーション上で演奏するというのは知っていて、だからレコーディング現場にカメラを持ち込んで演奏者のプレイを録画していたんですけど、とはいえ、あそこまでクオリティの高い映像になるとは思っていませんでした。しかも、あの話は「God knows…」が物語の山場になるように演出していただいて、作曲家としては感謝しかないですね。


――音楽から離れて作品を見たとき、『ハルヒ』はどんなところが魅力的だと思いますか?

神前 ハルヒというキャラクターの魅力に尽きるんじゃないでしょうか。前の話に出たナディア(『ふしぎの海のナディア』)やアスカ(『新世紀エヴァンゲリオン』)と同様に、傍若無人なヒロインに振り回される快感というのはあると思います。それに劇中には宇宙人、未来人、超能力者などさまざまなキャラクターが登場しますけど、結局のところハルヒの正体というのがいちばんの謎で、そこを明らかにしていくのがこの作品の最大のテーマですよね。世界の謎とヒロインが直結していて、他のキャラクターはなにがしかの思惑を持って振る舞っているとなれば、視聴者としてはキョンに感情移入せざるを得ない。そこの部分を終始徹底しているのが、この作品の非凡さだと僕は思います。

――とくに好きなエピソードはありますか?

神前 「射手座の日」(第1期第11話/第2期27話)と「サムデイ イン ザ レイン」(第1期第9話/第2期28話)が好きですね。「射手座の日」の宇宙戦艦による戦闘シーンの映像や、「サムデイ イン ザ レイン」の何も起こらない時間を延々と映すという定点観測的な演出がすごかったです。


――このふたつのエピソードは第2期では最後に配置されていて、その後に公開された映画『涼宮ハルヒの消失(以下、消失)』への布石にもなっているんですよね。

神前 どちらも長門のお話ですからね。音楽的にも、とくに「サムデイ イン ザ レイン」は『消失』に近いところがあると思います。『消失』ではエリック・サティの楽曲も使われていて、僕としても全体的に淡い雰囲気を意識していたのですが、「サムデイ イン ザ レイン」で流れる三拍子のピアノと弦だけの「ある雨の日」という楽曲は、どことなくサティがいうところの「家具の音楽」っぽい雰囲気があるんですよ。


――『消失』とのリンクをより感じさせてくれる、印象的な楽曲ですよね。

神前 でも、この曲を作ったのは第1期なので、僕としては『消失』を意識しているわけではないんですよね。先ほどもいったようにもう無我夢中で、そもそも全体を見据えてのコントロールなんて一切できていませんでしたから(笑)。それでも振り返ってみると『ハルヒ』の楽曲の中では異色のテイストで、僕自身「こういう音楽も作れるんだな」という可能性を感じた曲でもありました。


――異色といえば、「長門(有希)VS朝倉(涼子)」もそうですね。

神前 「長門VS朝倉」に関しては、じつは僕なりに鷺巣詩郎先生の雰囲気を取り入れて、『新世紀エヴァンゲリオン』や『ふしぎの海のナディア』っぽい音楽に挑戦してみた曲なんです。でも、やってみると結局は鷺巣先生の真似事にしかならず、あらためて鷺巣先生のオリジナリティーのすごさというものを思い知らされました。


――また『ハルヒ』の第2期といえば「エンドレスエイト」にも触れなくてはなりませが、音楽制作的にはどのような感じだったのでしょうか?

神前 あれは音楽的には8話分の曲を作っているんです。実際にそれらすべての曲が使われたわけではないんですが、最初は「8話すべてで違う音楽をつけよう」というのがコンセプトだったんですね。ただ、まったく同じシーンに異なる音楽を作るというのは、これはなかなか大変なんですよ。


――しかも8話分。想像を絶しますね。

神前 よく聞いていただくと、繰り返しが進むに連れてだんだんと楽曲が荒れてきて、ノイズが目立っていくんです。今になって振り返ってみると、作っている僕の精神状態を表していて面白いなと思います。


――TVアニメデビュー作にもかかわらず、かなり濃い体験だったんですね。

神前 そうですね。でも、最初の担当作品が『ハルヒ』だったことはすごく幸運だったなと思います。劇伴だけでなく、主題歌や挿入歌も含めて幅広く担当させていただいたことで、その後の自信にもつながりましたから。

これは『ハルヒ』に限らずですが、僕は本当に作品に恵まれているんですよ。そこだけは自信をもって周りに自慢できることです。






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